
なぜ500人未満の企業では高ストレス者が減らないのか ─ 規模特有の「サポート不足」構造から考えるメンタルヘルス対策 ─
毎年ストレスチェックを実施しているのに、高ストレス者率がなかなか改善しない。そんな悩みを抱える人事・労務担当者は少なくありません。
実は500人未満の企業には、大企業とは異なる構造的な課題が存在することが私たちの分析データから見えてきました。
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500人未満企業は高ストレス者率が高い傾向がある
私たちがストレスチェックのデータを規模別に分析したところ、以下のことがわかりました。

図1.500人以上/未満の企業の高ストレス者および総合健康リスク状況
500人未満の企業は、500人以上の企業と比較して高ストレス者率・総合健康リスクがともに高い傾向があります。
ストレスチェックを実施しているにもかかわらず、なぜ500人未満の企業では改善が進まないのでしょうか。原因を深掘りすると、ある共通した傾向が見えてきました。
原因は「サポートの届かなさ」にある
分析の結果、500人未満の企業では健康リスクB(職場のサポート)が特に高いことがわかりました。
図⒉ 500人以上/未満の企業における健康リスクB(職場のサポート)の数値
健康リスクBとは、上司・同僚からのサポートの弱さを示す指標です。数値が高いほど、職場内のサポートが届いていないことを意味します。今回の分析では、この健康リスクBの差(-1.40)が、全指標の中で最も大きな開きを示しています。
500人未満の企業でこの傾向が出やすい背景には、こうした構造があります。
- 一人ひとりの業務負荷が高く、同僚をサポートする余裕が生まれづらい
- 管理職が兼務や現場業務を抱えており、部下に向き合う時間が取りにくい
- 組織としての相談文化や仕組みが整っていないケースが多い
その結果、イライラ感・抑うつ感が蓄積していく
職場のサポートが届かない状況が続くと、心身への影響が数値にも表れています。
図3. 500人以上/未満の企業におけるイライラ感・抑うつ感に関連する数値
イライラ感・抑うつ感といったメンタル面だけでなく、自覚的な身体的負担も500人未満の企業の方が高い傾向があります。心身の両面にわたって影響が出ている点は見逃せません。
ここで重要なのは、これは「メンタルが弱い社員が多い」という個人の問題ではないということです。サポートが届かない職場環境が、従業員の心身を蝕んでいる、つまり環境・構造の問題として捉える必要があります。
この視点は、社内でメンタルヘルス対策の必要性を経営層に訴える際にも有効です。「個人の問題」ではなく「職場環境への投資」として語ることで、対策の優先度を引き上げる説得材料になります。データを持って経営層に臨むことで、感覚論ではなく根拠のある対話が可能になります。
では、何から手をつければよいのか
高ストレス者率の改善には、職場のサポート不足を解消することが鍵です。以下の3つのステップで取り組むことをおすすめします。
STEP1:サポート不足の組織や属性を特定する
まず取り組むべきは、自社のどこにサポート不足が生じているかを把握することです。ストレスチェックの結果を全社集計で終わらせず、拠点別・部門別・性別・年代別など属性ごとに分解することで、課題が集中している箇所が見えてきます。全社一律の対策ではなく、優先順位をつけた的確な対策立案が可能になります。
STEP2:現場の状況を把握する
サポート不足の箇所が特定できたら、次は「なぜそうなっているのか」を現場レベルで把握します。人事や産業保健スタッフによる面談、管理職による1on1でメンバーに率直に意見を求めるといった方法が有効です。
ただし、上司からのサポートが低いと評価されている職場では、メンバーが話しにくさを感じる可能性があります。そのような場合は、外部のカウンセラーによる個別面談や管理職向けのコンサルティングによる1対1で第三者視点で振り返る機会をつくることが有効です。
STEP3:把握した状況に基づき、職場改善施策を計画・実行する
現場の状況が把握できたら、具体的な改善施策を計画・実行します。その際のポイントは以下の通りです。
- いつまでに・何を・誰が行うかを明確にした計画を策定する
- 行動目標となる数値を設定する
- まずは1〜3か月で効果が出そうな施策から着手する
- 1〜3か月ごとに振り返り、施策の継続・修正を判断する
- 管理職だけに任せず、人事部も計画策定や見直しをフォローすることで、やりっぱなしを防ぎ管理職の負担感を軽減できる
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