お役立ちコラム

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Case_13 うつ病治療中の従業員が「退職したい」と言ってきた

 うつ病で休職中の副店長A(30代女性)についてご相談します。勤続10年のA副店長は、B店長やアルバイトからも頼りにされる存在でしたが、なんでも受け止める優しい性格から、次第に仕事だけでなく、人間関係の相談等も抱え込むようになりました。その一つひとつに誠実に対応していたので、周囲にとっては大変ありがたい存在だったのですが、徐々に負担が大きくなり、思い悩むあまり、調子を崩してしまったようです。

 ある日、交差点で信号待ちをしているときに、ふと、「今、道を渡れば死ねるかな」と考えたといいます。そのままふらふらと交通量の多い赤信号の道路を渡ろうとしたところで、偶然通りかかった通行人に引き戻され、A副店長は我に返ったそうです。翌日、心配した家族の勧めもあって、かかりつけの内科を受診しました。疲労は認められるものの、身体的な疾患は見られないとのことで、精神・神経科を紹介され、うつ病との診断から休職に至ったという経緯があります。


 3か月の休職後、元の店舗に復帰したものの、勘を取り戻すのが難しかったようです。些細なミスを繰り返してしまう度に、理解のないアルバイトから、「またですかぁ、頑張ってくださいよ!」などと、励ましとも揶揄ともつかない言葉を毎日のようにかけられ、調子を崩しかけているのではないかという話が聞こえてくるようになりました。


 人事部としては、A副店長への対応だけでなく、従業員の彼女への接し方についても検討していた最中、B店長から、「Aさんから、私のような役に立たない人間は会社の迷惑になるので仕事を辞めたいと言われている。つらそうなので、辞意を受け入れたほうがよいのか迷っている」と相談がありました。B店長としては、かつてのA副店長の活躍を知っているだけに、復調してまた一緒に働くことを願っているとのことでしたが、会社としては、どう対応するのがいいか迷っています。このまま退職させてよいものでしょうか。


■こころの声■

  • 性格はいいかもしれないが、休職、復職を繰り返すようでは困る。以前のように働けるようにならないなら、辞意を受け入れてもよいのでは。
  • 復帰後の職場で、他の従業員がどのようにAさんと接したらいいのか、人事でも適切に支援したいとは思うが・・・。


対応の考え方

うつ病と言う病気が「退職したい」と言わせていることもある

この事例のAさんのように、うつ病による休職者のなかには「会社(仕事)をやめたほうがいいのではないか?」と悩む方がいます。しかし、うつ病は自分を責め、判断力が低下するという症状を伴うことがあります。退職だけでなく、離婚や転居など、その後の人生を左右するような大切なことを決断するのは、先延ばしにしたほうがよいと言われています。

辞意を受け入れる前にできるだけの対処をしておく

 A副店長の言葉も再発した病気が言わせているのかもしれません。人事担当者は彼女の気持ち、事情を丁寧にお聴きいただければと思います。その後で、産業医や主治医への相談を勧め、休職期間が残っているようならば、再度の休職を提案するのがよいと考えられます。勤続10年で、店長やアルバイトの方も頼りにするような優秀な人材とのことですから、再度休養していただき、回復を待ってはいかがでしょうか。

 この事例では当てはまらないかもしれませんが、こうしたケースは簡単に辞意を受け入れてしまうのは、後からトラブルに発展することがあります。「仕事のせいでうつ病になったのに会社は私を辞めさせた」と訴えを起こされてしまうかもしれません。辞意を受け入れる前に、会社としてできる対応について、検討・整理しておくことをおすすめします。

 また、いたずらに休職・復職を繰り返すような従業員が数多く発生するなどしたら問題です。現在の就業規則を確認し、現状に即していない場合、例えば休職理由が同一疾病と認められる際は休職期間を積算するように規則変更するなどの検討も必要でしょう。歴史のある会社では、休職規定は身体疾患を基準につくられたままになっていることもあり、精神疾患での休職には対応しにくい場合があります。

スムーズな復職を支援する

 A副店長のような場合には、復帰後の職場適応をスムーズにするには何が必要かを考えることが必要です。まず、仕事の負担という点から考えてみましょう。周囲から頼りにされるAさんですから、いろいろなことを抱え込みすぎてしまったようです。そこで、B店長には本人の仕事の内容や量を上司の立場で十分に把握して見直すことをすすめました。また、人事担当者を通じて、復帰先の従業員に対しては、本人の了解を得た上で、心の病気で休んでいたことを伝え、周囲の対応としても以前のように何でも頼りにするのではなく、Aさん自身が仕事のペースがつかめるまで、しばらくは負担をかけないようにと伝えました。

 A副店長ご自身は、働き方を見直す必要があるかもしれません。うつ病の症状の改善には薬も必要ですが、本人の働き方や考え方、ストレス対処法を見直すことが、再発リスクを下げることにつながると考えられるからです。主治医や産業医と相談の上、必要に応じてカウンセリングを受けてみるのも効果があるかもしれません。

 また、社内全体で、従業員教育の一環として心の病の基礎知識を学ぶ機会を作るとよいでしょう。


文責:保健同人社EAPコンサルタント

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