お役立ちコラム

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Case_2 メンタル不調者に受診をすすめたい

 開発課のB課長から「メンタル不調が疑われる部下Aに受診を勧めたいのだが、どういう言い方で勧めるのがいいものか」と相談を受けました。Aさんは30代男性、入社15年目のシステムエンジニアです。責任感が強く、真面目で、仕事にも定評があります。主任としてメンバーからの相談に乗り、顧客の難題にも丁寧に対応するなど、人当たりもよく優秀な人材で、将来的に開発課の中心となって活躍すると期待されています。

 ところが、この1か月ほど、週明けになると体調不良を理由に遅刻や当日欠勤をすることが増えてきたのだそうです。B課長はメンタル不調を心配しましたが、「メンタル不調だから病院へ」とは言いにくいので、「具合が悪そうだけど、一度病院で診てもらったほうがいいんじゃないか?」とやんわりと受診を勧めたのだそうです。ところが、本人は「大丈夫です」と言って受診しません。どう見ても、大丈夫そうには見えないとB課長は心配しています。

 開発課は、納期に追われ、厳しい予算のなかでシステムを開発する部署なので、ストレスはかなり多いはずです。実際、過去にもストレスから体調を崩して休職し、その後退職となったメンバーがいるため、B課長としては、Aさんには潰れずにいてもらいたいと考えています。当社はフレックスタイム制を導入しているので、遅めに出勤できますが、その分帰りが遅くなります。また、休日出勤が常態化しているようなのですが、勤怠申請上では実際の時間より短く申請しているようで、さほど問題ないレベルに見えてしまっているようなので、こちらは対応します、とB課長は言います。

 管理職も人事も、大事に至る前になんとか受診してもらいたいのですが、本人が大丈夫と言い張る場合は、どうしたらいいでしょうか。無理やり連れて行くわけにもいきませんし、かといって、放っておいて何か起きてからでは遅いとも思います。

■こころの声■
  •  会社としては受診を勧めたので、この先何があっても本人の自己責任ではないか。
  • パフォーマンスが下がった状態で働かれても周囲に悪い影響がある。無理にでも受診させたほうがいいのだろうか。


対応の考え方

業務上の支障や身体症状など客観的な事実を伝え、受診拒否の理由をたずねる

 「受診を勧めたのに本人が応じなかった」は、安全配慮義務を果たしたことにはなりません。本事例のAさんのように受診を勧めても応じない場合、「会社としては確かに受診を勧めたので、あとは本人の問題」と割り切っていいのでしょうか。答えはノーです。安全配慮義務を果たしていたかの判断においては、従業員の健康悪化を予見できたかどうかが問われます。したがって、自殺や事故で命にかかわるような事態に至ったとき、会社は体調不良を知っていたわけですから、「受診を勧めたが本人が応じなかった」では、安全配慮義務を果たしたことにはならず、管理者責任を問われる可能性があります。

 対策としては、まず現状を確認する必要があります。なぜメンタル不調が疑われるのか、勤務態度がいつもとどう違うのか、業務パフォーマンスが落ちているのか、言動がおかしいのか、など何かおかしいと感じている、その何かを具体的にした上で、客観的な事実を伝えながら受診を勧めることで、その必要性を伝えていきましょう。

 また、なぜ受診を拒否するのかを聞いてみると、解決につながることがあります。精神疾患に偏見を持っている、ローン返済があるので休職すると経済的に苦しくなる、休むとゆくゆくは解雇されると思い込んでいる、など、その人なりの受診に踏み切れない理由があります。なかには、自ら休むという判断ができない状態に陥っている人もいますので、本人の状態をつかむためにも、理由をたずねることは必要です。

 受診を勧める際は、メンタル不調を前提にしないほうがよいといわれています。なぜなら、専門家につながっていない段階では、心の不調なのか、身体の不調なのか、プライベートの問題なのか、作業環境の問題なのか、わからないからです。「メンタル不調のようだから、精神科へ行きなさい」という決めつた言い方をすると、抵抗感をより強固なものにしてしまうことが多いようです。また、メンタル不調は大きく分けて心と身体と生活習慣の変化に表れます。中でも身体に表れている場合には、その症状に焦点を当て受診を勧めると本人も受け入れやすくなります。話を聞いて、眠れない、食欲がない、頭痛がする、などの身体症状があるなら、「眠れない日が続いていると、日中ぼんやりしてつらくないですか。十分な睡眠をとるために、一度診てもらったほうがいいと思いますがどうですか」といった具合です。「調子が悪そうだから、病院へ行ってみたら?」ではなく、具体的に「こういう理由で調子が悪いように見えるから受診を」と表現するとわかりやすくなるものです。


本人のつながりやすいルートで専門家につなぐことが大切

 それでも、なかなか受診しようとしないときは、「私も心配だが、ご家族は何か言っていませんか?私からご家族に連絡して相談したいと思うのですが、いいですか?」と家族への連絡を打診するのも一つの方法です。また、産業医面談を勧める、人事や管理職が産業保健スタッフの面談予約をとる、といった方法もあります。

 精神科ではなく、まずはかかりつけの内科を受診するほうが抵抗が無い場合もあります。この場合、内科で所見がなければ、精神科などの他科を紹介してもらえることがありますから、精神科にこだわる必要はありません。いずれにしても素人判断を避け、まずは本人のつながりやすいルートで専門家につなぐことがとても大切です。つないだ後、継続的な支援を受けられているかどうかを確認することも忘れないようにしてください。


文責:保健同人社EAPコンサルタント

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