
ストレスチェックの「実施者」とは?役割・要件・選任のポイントを徹底解説
2015年に義務化された「ストレスチェック制度」の中で、社内メンタルヘルス対策のキーパーソンとなるのが「実施者」です。
「実施者って誰?」「実施事務従事者と何が違う?」「どの資格が必要?」「外部委託は可能?」など、人事担当者にとって疑問も多くなってきます。
本記事では、実施者の定義・役割・資格要件・選任・外部委託について法的根拠を交えて、実務に役立つ切り口で整理します。
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実施者とは?定義と法的根拠
「実施者」とは、ストレスチェックの企画・評価・面接指導の体制整備など、制度の「司令塔」的役割を担う専門職です。
【法的定義の根拠】
労働安全衛生法 第66条の10では、次のように定められています
「厚生労働省令で定めるところにより、医師、保健師その他同省令で定める者による心理的負担の程度を把握するための検査を行わなければならない。」
つまり、実施者は“医師・保健師・その他省令指定資格者”でなければならず、制度実施において医学的判断ができる専門家であることが法的に求められています。
ストレスチェック「実施者」の主な役割
実施者は、ストレスチェックの重要な判断を担います。
実施者の役割は、以下の通りです
役割 | 内容 |
検査内容の決定 | 質問票や評価基準の選定をおこなう |
結果の評価 | 回答からストレス度を判定し、個人に結果を通知する |
面接指導の要否判断 | 面接指導対象者を選定する |
面接指導の実施 | 医師面接への勧奨、必要に応じた面接 |
事後措置の提案 | 職場改善・制度整備への助言 |
運用体制整備 | 通知方法・記録・分析の設計など |
実施者は単なる評価者ではなく、専門的な立場から制度設計者・判断者・改善提案者としての側面を持つ「中心的人材」となります
実施者になれる資格要件
実施者は医学的知見に基づく判断が可能な専門家な必要があります。
そのため、実施者認定の資格は、労働安全衛生規則 第52条の10により、明確に定義されています
- 医師
- 保健師
また、厚生労働大臣が定める研修を修了した場合には、以下の資格を有する者も、ストレスチェックの実施者として認められます。
- 歯科医師
- 看護師
- 精神保健福祉士
- 公認心理師
3年以上健康管理職として経験を有する看護師・精神保健福祉士は、研修免除で実施可能となる経過措置もあります。
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医師以外が実施者となる場合の注意点
保健師や心理職が実施者となることも可能ですが、医学的判断が必要な場面には必ず医師の連携が条件です
- 面接指導の要否判断と実施は、最終的に医師が実施する必要があります。
- 医療行為に該当する面接指導は、常に医師が関与すべきとの法的規定に基づいています。
これは、制度の品質を担保し、従業員の安全・信頼性を高めるための重要な措置となっています。
実施者の外部委託
職場を熟知している産業医の起用が最も効率的ですが、社内に資格者がいない場合は、外部の医師・保健師・研修済み心理職等への委託が認められています。
厚労省から「外部機関への委託チェックリスト例」が提供されているので、これをもとに、安全管理と契約体制の整備を進めることが、ポイントとなります。
外部委託時の「実施者」パターンと推奨体制
ストレスチェックを外部の専門機関に委託する場合、実施者の選び方には主に2つのパターンが存在します:
- パターンA:外部機関にすべて任せる
実施者も外部機関が担うフル委託方式です。特に小規模企業ではコスト効率の良さと手間の軽減が期待できますが、「社内体制が関与しない分、会社との連携が弱くなる」というデメリットもあります。
- パターンB:自社産業医と共同で実施者を務める ※推奨
推奨される運用形態で、社内産業医と外部実施者が共同で実施責任を担います。
厚生労働省の実施マニュアルには、以下のように明記されています
「ストレスチェックの実施を外部機関に業務委託する場合にも、産業医等の事業場の産業保健スタッフが共同実施者として関与し、個人のストレスチェックの結果を把握するなど、外部機関と事業場内産業保健スタッフが密接に連携することが望まれます。」
実施者と実施事務従事者の違い
実施者」と「実施事務従事者」は、混同しやすいですが、役割も責任も異なります。
それぞれの立場で担う業務や守秘義務の違いを理解して、制度運用を行いましょう。
区分 | 実施者 | 実施事務従事者 |
資格要件 | 医師等の専門職 | 不問、事務職でも可 |
主な業務 | 評価・判断・面接 | データ入力、通知、集計など |
守秘義務 | 医療職としての厳格な義務 | 法で守られるが範囲は実施者より限定的 |
実施事務従事者も個人情報を扱うため、守秘義務があります。
情報漏洩には刑罰・民事責任が課されるリスクもあるため、アクセス制限や取り扱いルールは厳格に設計しておきましょう。
実施者やその業務に関わるよくある質問(FAQ)
Q. 実施者は必ず毎年同じ人物でないとダメですか?
A. 継続性は望ましいが、年度ごとに変更しても問題ありません。
Q. 実施者は複数人いてもよいですか?
A. 可能です。特に大規模事業所では負担軽減のためにも有効です。
Q. 高ストレス者が面接指導を拒否したらどうしたらよいですか?
A. 面接指導は強制できません。本人意思の確認とその記録の保管をしておきましょう。また、企業・実施者は再度の申し出を促す(勧奨)などのフォローを行うことが推奨されています。
医師面談についての詳細は、こちらも参照ください→ストレスチェック後の高ストレス者への医師面談とは?ストレスチェック後にやるべき人事対応ガイド | 保健同人フロンティア
ストレスチェックの義務範囲については、こちらも参照ください→【2025年最新版】ストレスチェックは義務?労働安全衛生法に基づく実施条件と罰則を徹底解説! | 保健同人フロンティア
まとめ:実施者は制度の“要”を担う存在
ストレスチェック制度は、単なる年1回の検査ではなく、企業のメンタルヘルス対策を支える仕組みです。その中心にいるのが「実施者」。
医学的判断を担う専門職であり、事業者との橋渡し役でもあります。
- 資格要件は明確:医師・保健師・研修済み専門職が対象。面接指導には医師の関与が必須です。
- 外部委託も可能:ただし、契約や情報管理体制の整備は不可欠。産業医との連携が望ましい。
- 選任は“形”ではなく“実効性”を重視:信頼される体制づくりが、従業員の安心と企業の持続的成長につながります。
ストレスチェックを「義務だからやる」から「職場改善につなげる」へ。
その第一歩が、適切な実施者の選任です。制度を“活かす”か“形だけ”にするかは、ここで決まります。
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