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ストレスチェック結果の取り扱いと企業が守るべきルール ―保存・報告・活用の実務対応―

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目次[非表示]

  1. 1.ストレスチェック制度の重要性と運用のポイント
  2. 2.実施者と実施事務従事者の役割の違い
    1. 2.1.実施者とは
    2. 2.2.実施事務従事者とは
    3. 2.3.産業保健スタッフの役割
  3. 3.ストレスチェック結果の取り扱いに関する「よくある誤解」と「正しい理解」
  4. 4.結果を扱う際の注意点と実務対応
  5. 5.労基署への報告と義務
  6. 6.ストレスチェック結果の活用と職場改善の進め方
  7. 7.まとめ:ストレスチェックの取り扱いで押さえるべきポイント

ストレスチェック制度の重要性と運用のポイント

ストレスチェック制度は、従業員のメンタルヘルス不調を未然に防ぐために導入された仕組みです。

2015年12月から、従業員50人以上の事業場で年1回の実施が義務化されましたが、2025年の法改正により、50人未満の事業場にも義務化されることが決定しています。
この改正は、2028年までに段階的に施行される予定であり、企業規模に関係なく、すべての事業場でストレスチェックの実施が求められるようになります。

それに伴い現場では、

  • 「結果を誰がどう扱うのか」

  • 「労働基準監督署への報告はどう対応するのか」

といった点で戸惑うケースが少なくありません。

特に、人事担当者が異動でゼロから担当する場合など、制度理解が曖昧なまま進めると、個人情報保護法違反や従業員との信頼関係の損失につながる恐れがあります。

本記事では厚生労働省の「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」をもとに、結果の取り扱い・保存方法・労基署報告の流れを整理し、さらに職場改善への活用方法を解説します。

実施者と実施事務従事者の役割の違い

実施者とは

ストレスチェックの責任者であり、以下の資格を持つ専門職が該当します。

  • 医師

  • 保健師

  • 厚労省指定研修を修了した歯科医師、看護師、精神保健福祉士、公認心理師

主な役割

  • 個人結果の評価

  • 面接指導対象者の選定

  • 本人同意がある場合のみ、医師意見や就業措置を事業者へ報告

  • 個人結果の保管・通知・廃棄の最終責任  ※事業者が指名した場合のみ、実施事務従事者が記録保存を行うことが可能。

実施事務従事者とは

実施事務従事者は、実施者の指示を受けてストレスチェックに関する事務作業を担当します。 資格は不要ですが、労働安全衛生規則により、監督的地位(人事権を持つ者)は不可という法令上の制約があります。

具体的な業務:

  • 質問票の配布(マークシート受検を含む)

  • システムへの登録

  • 集団分析の集計

注意点:

  • 個人結果の内容を閲覧することは禁止

  • 人事担当者が兼務する場合は、閲覧範囲を「受検有無」「受検率」「対象者数」に限定し、アクセス権を制御する必要がある

産業保健スタッフの役割

心理職、看護職、産業カウンセラーは、医師による面接指導の代替はできません。

しかし、厚生労働省のストレスチェック制度実施マニュアルでは、産業保健スタッフとして相談体制の整備や、結果フィードバック時の心理的ケアに関与することが推奨されています。

これらの専門職は、従業員が安心して相談できる環境を整え、ストレスチェック結果のフィードバック時に心理的サポートを提供するなど、職場のメンタルヘルス対策において重要な役割を担っています。

ストレスチェック結果の取り扱いに関する「よくある誤解」と「正しい理解」

ストレスチェック制度の運用では、誤解が生じやすいポイントがあります。ここでは、代表的な4つの誤解と正しい対応を整理しました。確認してみましょう。

よくある誤解

正しい理解

ストレスチェックは人事評価に使える?

評価目的での利用は禁止。目的は職場改善と従業員支援。

高ストレス者の名前は会社が把握できる?

本人同意なしに取得不可。守秘義務が適用。

結果は本人だけに渡せば義務は果たせる?

結果通知だけでは不十分。希望者には医師面談の機会を設ける義務あり。

面接指導結果を人事データに反映してよい?

本人同意なく共有不可。個人情報として保護。

結果を扱う際の注意点と実務対応

ストレスチェックの結果は、個人情報保護と法令遵守の観点から慎重な取り扱いが求められます。誤った対応は労働安全衛生法違反につながる可能性があるため、ここでは特に重要なポイントを整理します。

【個人結果の通知】

  • 実施者が本人に直接通知

  • 紙・電子問わず、本人以外が閲覧できない仕組みを整備

  • 通知書には「医師面接指導の申し出(希望性)の有無」を記載

【結果の保存・管理】

  • 保存期間:5年間(労働安全衛生法第66条の10)

    • 医師による面接指導の結果記録は、事業者が5年間保存する義務がある

    • 高ストレス者が面接指導を希望した際の記録も、同様に5年間保存が望まれる

  • 保管方法:鍵付きキャビネット、暗号化サーバーを使用

    • USBメモリやCD-Rなどの電磁的記録媒体は、厳重な管理が必要

  • アクセス権限管理とログ記録を徹底

  • 人事部が補助する場合は、書面で責任範囲を明確化

【集団分析の活用】

  • 原則として、10人未満の部署は非開示とすることが望まれる

  • 厚生労働省の実施マニュアルでは、個人が特定される恐れがある場合は、本人の同意が必要と明記

  • 開示が必要な場合は、衛生委員会などで共有・承認を得ることが推奨

  • 集団分析の結果は、衛生委員会・産業医・産業保健スタッフが職場改善策を検討するために活用

  • 異動や人事評価への利用は禁止

【結果の廃棄】

  • 保存期間満了後、紙は溶解、電子データは完全削除

  • 外部委託時は廃棄証明書を取得 ※個人情報保護と法令遵守のための重要なステップ

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労基署への報告と義務

ストレスチェック制度では、従業員50人以上の事業場において、事業者は毎年「心理的負担の程度を把握するための検査結果等報告書」を管轄の労働基準監督署へ提出する義務があります。これは労働安全衛生法に基づく法定義務であり、違反すると行政指導や罰則の対象となる可能性があります。

  • 対象:従業員50人以上の事業場

  • 報告方法:2025年1月からe-Gov電子申請義務化

  • 報告内容:個人情報ではなく統計情報(受検者数、面接希望者数など)

  • 未実施の場合も報告義務あり

  • 違反時のリスク:最大50万円の罰金、行政指導対象

  • 提出期限:法令で一律の期限はないが、前回提出日から1年以内に報告する必要がある

報告についてはこちらの記事も参考に→ストレスチェック報告書作成・提出完全ガイド 提出方法・記入例・電子申請・注意点まで徹底解説 | 保健同人フロンティア

ストレスチェック結果の活用と職場改善の進め方

ストレスチェック制度の目的は、単に検査を実施することではなく、結果を活用して職場環境を改善することにあります。

■効果的な活用方法と実務のポイント

  • 部署単位で傾向を把握し、業務量の調整や管理職向け研修など、改善施策に反映

  • 実施者や産業保健スタッフが衛生委員会で改善策を提案し、組織全体のメンタルヘルス向上につなげる

  • 改善後は効果測定を行い、翌年度に反映するPDCAサイクルを回すことが望ましい

  • 健康経営の一環として、目標値を経年で確認する企業も増加

結果の活用についてはこちらも→ストレスチェックの活用方法とは?職場環境改善につなげる運用・分析・改善のポイント | 保健同人フロンティア

まとめ:ストレスチェックの取り扱いで押さえるべきポイント

ストレスチェック結果の適切な管理は、法令遵守だけでなく、従業員の信頼を守る企業文化づくりにつながります。
重要なポイントは次のとおりです。

  • 本人の同意とプライバシー保護を最優先すること

  • 集団分析を活用し、職場改善に結びつけること

  • 結果を人事評価や異動に利用することは禁止

  • 保存期間は5年間、廃棄は完全削除・溶解処理で再現不能に

  • 労基署への報告は事業場単位で年1回、e-Gov電子申請が義務化

ストレスチェック制度の本来の目的は、「本人の安心」と「組織の成長」を同時に支えることです。適切な運用と改善施策を通じて、職場のメンタルヘルスを強化しましょう。

弊社が提供するストレスチェック「HoPEサーベイ」は、法令対応とセキュリティ強化に努めています。

プライバシーマーク・ISO27001認証取得で個人情報保護を徹底し、労基署報告用データ出力機能で報告業務を効率化、また、アクセス権限管理で「人事評価への利用禁止」を担保しております。

さらに、受検者に対しても、即時フィードバック機能で高ストレス者の面接希望率を向上につなげます。

導入事例や機能詳細をまとめた資料も無料でご提供しておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

監修:佐々木玲子
監修:佐々木玲子
【所属:MBK Wellness株式会社 保健同人フロンティア事業本部 健康経営事業部 企画・マーケティング室 (管理栄養士/公認心理師)】 地域や医療機関、研究所およびフリーランスの活動を経て、当社にて保健指導、EAP(従業員支援プログラム)、研修、各種コンサルティングの企画・実施に従事。現在は、これまでの経験を活かし、企業人事の視点に立った、従業員の健康支援や人的資本投資に資するサービスの企画・開発を担当。 メンタル・フィジカルの両面から、従業員一人ひとりの「Well-being」の実現を目指し、企業の健康経営に基づく持続的成長を支援している。

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