
介護と仕事の両立支援は企業の必須対応へ ―法改正後の最新状況と、2026年健康経営の視点から考える対応ポイント―
2025年4月に育児・介護休業法の改正があり、企業の人事担当者や健康経営推進担当者の間では、「介護と仕事の両立支援」がこれまで以上に重要なテーマとして扱われています。
団塊ジュニア世代が50代に入り、親の介護が本格化する時期を迎えたことで、働きながら介護を担う従業員が急増しています。
厚生労働省の調査では、年間約10万人が介護を理由に離職しており、企業にとっては深刻な人材流出のリスクです。
こうした背景から、両立支援は「制度を整える」だけでは不十分で、健康経営の視点を踏まえた実務対応が求められています。
目次[非表示]
介護と仕事の両立支援が必要とされる背景
介護離職は、企業にとって単なる人員不足ではありません。
離職するのは多くの場合、経験豊富で組織の中核を担う40〜50代の従業員です。彼らが抜けると、業務の属人化が進み、後任育成や採用コストが増大します。
また、介護負担を抱えながら働く従業員は、睡眠不足やストレスから心身の不調を抱えやすく、プレゼンティーズム(出勤しているが生産性が低い状態)も増えます。
つまり、介護と仕事の両立支援は、企業の生産性や組織の持続性に直結する経営課題といえるのです。
2025年法改正後の企業の法的義務
2025年の法改正では、企業に対して「介護と仕事の両立支援」を進めるための複数の義務が課されました。
個別周知・意向確認や介護離職防止のための雇用環境整備は、「努力義務」ではなく企業に課された法的義務です。一方で、介護のためのテレワーク導入は努力義務として位置づけられています。
2025年法改正後の企業の主な法的義務(介護)
■個別周知・意向確認(義務)
従業員やその家族に介護が発生した場合、企業は次の内容を個別に説明し、意向を確認することが義務となりました。
利用できる介護休業・介護両立支援制度の内容
申出先や手続き方法
給付金などの仕組み
■介護離職防止のための雇用環境整備(義務)
介護休業や短時間勤務を理由とした不利益取扱い・ハラスメントを防ぐため、企業には次のような対応が求められます。
介護と仕事の両立支援に関する明確な方針の策定・周知
相談窓口の設置 など、相談しやすい体制づくり
■両立支援制度の整備(義務の中身として)
雇用環境整備の一環として、従業員が介護と仕事を両立しやすい制度を整えることが求められます。
介護休業
介護休暇
所定外労働の制限
短時間勤務制度 など
努力義務にとどまるもの
■介護のためのテレワーク導入
要介護状態の家族を介護する従業員がテレワークを選択できるようにすることは、努力義務とされています。
仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドラインの概要
経済産業省が公開している「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」は、企業が両立支援を進めるための実務ガイドとして位置づけられています。
特に強調しているのは、企業が整えるべき下記の「4つの環境」です。
企業として両立支援に取り組む姿勢を明確にし、従業員に周知すること。
管理職や従業員向けの研修を通じて、介護の基礎知識や制度理解を深めること。
介護に関する相談窓口を明確にし、安心して相談できる体制を整えること。
介護休業や短時間勤務、テレワークなど、柔軟な働き方を可能にする制度を整えること。
特に、従業員が介護の発生を職場に言い出しにくいという実態を踏まえ、管理職が早期に気づくためのコミュニケーションが重要であると指摘されています。
企業が整備すべき制度・体制
両立支援を実効性のあるものにするためには、制度を整えるだけでなく、従業員が「相談しやすい」「制度を使っても不利益がない」と感じられる環境づくりが欠かせません。
相談体制の整備
介護に関する相談は、従業員にとって非常にセンシティブなテーマです。
「迷惑をかけたくない」「評価に影響するのでは」といった不安から、相談をためらうケースが多く見られます。
そのため企業は、相談窓口を設置するだけでなく、以下のような相談しやすい環境づくりを意識する必要があります。
相談内容の守秘義務を徹底し、安心して話せる場をつくる
相談窓口の担当者が介護制度や働き方の選択肢に精通している
相談後のフォローアップを行い、状況の変化に応じて支援を継続する
相談窓口の存在を定期的に周知し、「相談してよい」というメッセージを発信する
特に重要なのは、相談したことが不利益につながらないという信頼感です。
これが担保されて初めて、従業員は安心して制度を利用できます。
管理職研修の強化
管理職は、両立支援の“最前線”に立つ存在です。
従業員の変化に最も早く気づける立場であり、適切な対応ができるかどうかで、従業員の働き続ける可能性が大きく変わります。
研修では、以下のような内容を扱うことが効果的です。
介護の基礎知識(要介護度、サービスの種類、費用など)
法的義務の理解(個別周知・意向確認、ハラスメント防止など)
柔軟な働き方の調整方法(時短勤務、テレワーク、業務分担の見直し)
早期発見のためのコミュニケーション(表情・遅刻増加・疲労の兆候など)
不利益取扱いを防ぐためのマネジメント
相談窓口や社内制度へのつなぎ方
特に「早期発見」は、介護離職を防ぐうえで極めて重要です。
従業員が介護の悩みを抱えていても言い出せないことは珍しくありません。管理職が日頃からコミュニケーションを取り、変化に気づき、適切な支援につなげることが、両立支援の成否を左右します。
健康経営の観点からの対応の必要性
介護と仕事の両立支援は、単なる福利厚生ではなく、企業の健康経営に直結する重要な施策です。介護負担は、従業員の心身の健康に大きな影響を与えます。睡眠不足、慢性的な疲労、精神的ストレスは、メンタル不調や生活習慣病のリスクを高め、結果として業務パフォーマンスの低下につながります。
健康経営の観点から見ると、両立支援は以下の3つの側面で大きな効果をもたらします。
プレゼンティーズムの改善
介護負担を抱える従業員は、出勤していても集中力が低下し、パフォーマンスが落ちやすくなります。
柔軟な働き方や相談体制が整うことで、従業員は安心して働けるようになり、結果として生産性が向上します。
エンゲージメントの向上
企業が従業員の生活背景に寄り添い、支援する姿勢を示すことで、従業員の企業への信頼感が高まります。
「この会社なら働き続けられる」という安心感は、エンゲージメント向上に直結します。
離職防止と人材確保
介護離職は企業にとって大きな損失です。両立支援が整っている企業は、従業員が長く働き続けられる環境を提供できるため、離職率の低下につながります。
また、採用市場においても「介護に理解のある企業」として評価され、優秀な人材の確保にもつながります。
健康経営は「従業員の健康を守る」だけでなく、「企業の持続的成長を支える経営戦略」です。
介護と仕事の両立支援は、その中心に位置づけられるべきテーマと言えます。
ビジネスケアラーの定義と企業が取るべき具体的な対応
「ビジネスケアラー」とは、仕事を続けながら家族の介護を担う働き手を指す言葉です。 近年、働きながら介護を担う人が増え、社会課題として注目されています。
■ビジネスケアラーが抱える主な課題
介護と仕事の両立による時間不足
心身の疲労
キャリアへの不安
職場で相談しづらい雰囲気
■企業が取るべき対応
制度利用を促すための個別周知
柔軟な働き方の提供
管理職による早期発見
相談窓口の活用促進
メンタルヘルス支援
これらの取り組みは、ビジネスケアラーの負担を軽減するだけでなく、企業全体の生産性向上や離職防止にもつながります。
まとめ
介護と仕事の両立支援は、2025年の法改正を機に、企業が必ず取り組むべき重要な経営課題になりました。団塊ジュニア世代の介護期突入により、ビジネスケアラーは今後さらに増え、企業の生産性や離職率に直結するテーマです。
企業が押さえるべきポイント
法的義務を確実に履行する
個別周知・意向確認、雇用環境整備、介護休業や短時間勤務制度の整備は、すべて企業の義務です。
制度を“使える環境”にする
制度があっても使われなければ意味がありません。不利益取扱いの禁止、相談しやすい雰囲気づくり、制度の周知が欠かせません。
管理職と相談体制の強化
介護の悩みは表に出にくいため、管理職の早期発見力と、信頼できる相談窓口が両立支援の成否を左右します。
ビジネスケアラーを支える仕組みづくり
柔軟な働き方、メンタルヘルス支援、キャリア継続のサポートは、離職防止と生産性向上に直結します。
法令遵守 × 健康経営 × 両立支援の実行力 この3つを備えた企業こそ、これからの時代に選ばれ、持続的に成長していく企業です。
MBK Wellness株式会社では、介護と仕事の両立支援をサポートするサービスを提供しています。
■従業員自身への介護についてのリテラシー向上の教育
動画コンテンツ「仕事と介護の両立支援」では、突然やってくる介護の前に、介護になる背景やいざ介護となった時の連絡先、そうなる前に知っておきたい親のことなどを11章、各章5分程度のコンテンツとしてまとめています。すべての従業員に知っておいてほしい介護の情報を1つにまとめたコンテンツとなっており、好評いただいています。
■法的義務の相談体制の整備に対応する、介護相談窓口パッケージの「ビジネスケアラー応援団」
この相談窓口では、各社の介護制度内容を連携いただき、介護に精通した専門家(保健師・看護師・ケアマネージャー等)が各社の介護制度に合わせた個別相談・支援をします。これにより、介護制度の活用促進と介護による離職を防止につなげます。また、「ビジネスケアラー応援団」では、全従業員向けの仕事と介護の両立に関する動画コンテンツもご提供することで、従業員の介護リテラシー向上を図ります。
■法的義務の管理職研修の強化
介護離職を防止するための、管理職が知っておきたい健康経営目線で必要な教育情報を1つにまとめた動画になります。「管理職として知っておきたい健康経営基礎知識」では、全5章、約30分で、健康経営度調査票に対応する、管理職が知っておきたい知識を全て網羅できるような構成となっています。
導入事例や機能詳細をまとめた資料も無料でご提供しておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。











