
エンゲージメントスコアとは? 組織の“見えない力”を可視化する測定設計と活用法
従業員の意欲や貢献意識といった“見えにくい力”を、数値で捉えることができたら——。
そんなニーズに応えるのが「エンゲージメントスコア」です。
経済産業省の『健康経営ガイドブック2025』では、エンゲージメントを「従業員の意識や行動の変化を測るKPI」として明記しており、人的資本経営の中核指標としての重要性が高まっています。
本記事では、「エンゲージメントスコアとは?」「どのように測るのか?」——そんな疑問を持つ人事・経営層の方へ、エンゲージメントスコアの定義から測定設計、活用法までをわかりやすく解説します。
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エンゲージメントスコアとは?定義と構成要素
エンゲージメントスコアとは、従業員が仕事に対してどれだけ前向きに、主体的に取り組んでいるかという「エンゲージメント(仕事への活力・熱意・没頭)」の状態を、数値として可視化する指標です。
厚生労働省は、エンゲージメントを「仕事に対する活力・熱意・没頭の3要素から成る心理的状態」と定義しています(『令和元年版 労働経済の分析』より)。
この定義は、経済産業省の『健康経営ガイドブック2025』にも共通しており、同ガイドブックの図表22では、ユトレヒト・ワーク・エンゲージメント尺度(UWES)を用いた測定が紹介されています。
また、同ガイドブックでは、以下のように記されています
コミュニケーションが良好で、仕事の目的が明確であったり、従業員の評価が公正に行われたりする等の健全な職場では、仕事へのやりがいを感じ、仕事を通じていきいきとした状態となる。こうした状態を評価することは、組織全体としてのマネジメント指標として重要な指標である。
つまり、エンゲージメントスコアは、従業員の心理的な充実度を測るだけでなく、組織の健全性やマネジメントの質を評価するための重要な経営指標としても位置づけられているのです。
エンゲージメントスコアは、以下の3つの心理的因子をもとに構成されるのが一般的です
組織への愛着(帰属意識・共感)
役割の遂行意欲(責任感・やりがい)
仕事への向上心(成長意欲・挑戦意識)
これらの因子を定量的に測定することで、従業員の“働く意欲の質”を可視化し、組織の状態や変化を客観的に把握することが可能になります。
エンゲージメントスコアを高めるメリット
エンゲージメントスコアを高めることは、単なる“従業員の満足”にとどまらず、組織全体のパフォーマンス向上に直結します。
経済産業省の『健康経営ガイドブック2025』でも、エンゲージメントスコアは人的資本の成果を測る重要な指標として位置づけられています。
具体的なエンゲージメントスコアを高めるメリットは以下の通りです
生産性の向上:仕事への没頭度が高まり、業務効率や成果が向上
離職率の低下:組織への愛着が強まり、定着率が高まる
チームの連携強化:信頼関係が深まり、協働が活性化
顧客満足度の向上:従業員の意欲がサービス品質に反映される
人的資本開示の裏付け:スコアの継続測定は、企業の信頼性や投資家評価にもつながる
エンゲージメントスコアを高める方法|3つの因子別アプローチ
エンゲージメントは単一の感情ではなく、複数の心理的要素の集合体です。
ここでは、スコアを構成する3つの因子ごとに、具体的な改善アプローチを紹介します。
組織への愛着を高めるには
経営層や上長から、経営理念やビジョンを繰り返し伝え、組織の方向性を共有する
社内報や経営層とのオープンな対話の場を通じて、共通の価値観への共感を育てる
社員同士のつながりを促進するイベントや仕組み制度を設け、帰属意識を高める
経営層と現場の距離を縮める仕組みをつくり、信頼関係を築く
役割の遂行意欲を高めるには
目標設定において「なぜその仕事をするのか」という意味づけを明確にする
成果だけでなく、取り組みのプロセスも評価する文化を育てる
自身の業務が組織全体にどう貢献しているかを可視化する
チーム内での役割や期待を明確にし、責任感と納得感を高める
仕事への向上心を高めるには
スキルアップの機会(研修・OJTなど)を明示的に提供する
キャリア面談や1on1を通じて、成長の方向性や希望を共有する
挑戦を歓迎する心理的安全性のある職場環境を整える
新しい業務やプロジェクトに挑戦できる機会を意図的に設ける
このように、各因子に応じた具体的なアプローチを講じることで、エンゲージメントスコアの向上に直結する実効性のある施策が実現できます。
エンゲージメントスコア測定の設計ポイント:何をどう測るか?
エンゲージメントスコアを効果的に活用するためには、測定の目的や設問設計においていくつかの工夫が必要です。
以下のポイントを押さえることで、より実態に即したデータを得ることができます。
測定目的を明確にする:離職防止か、マネジメント改善か、目的に応じて設問設計を調整
因子構造を意識した設問設計:愛着・遂行意欲・向上心など、構成要素ごとに設問を設計
属性別・部署別の分析:全社平均だけでなく、部署・年代・職種別に分解して分析
定点観測で変化を追う:年次比較やパルスサーベイで、改善の効果を可視化
健康経営とストレスチェックの関係
健康経営とは、従業員の健康を経営的な視点で捉え、戦略的に推進する取り組みです。
経済産業省の『健康経営ガイドブック2025』では、健康経営の実践において「ストレスチェックの活用」が重要な要素の一つとして挙げられています。
ストレスチェックの集団分析結果には、「職場の一体感」「上司との関係」「裁量の有無」など、エンゲージメントと重なる要素が多く含まれています。
つまり、ストレスチェックはエンゲージメントの状態を間接的に把握し、職場改善につなげる“入り口”としても活用できるのです。
健康経営・ストレスチェック・エンゲージメントスコアの測定は、それぞれが独立した取り組みではなく、相互に連動しながら組織の健全性を支える重要な要素といえます。
ストレスチェックとエンゲージメントサーベイは分けない方がいい理由
多くの企業がストレスチェックとエンゲージメントサーベイを別々に実施していますが、実務上は「調査の重複による負担」や「データの分断」が課題となることも少なくありません。
弊社が提供する「HoPEサーベイ」は、エンゲージメントも測れるストレスチェックです。
HoPEサーベイの特長
基本57項目に加え、独自設問を含めた最大80問構成
独自尺度①:人材の定着(インクルージョン)
独自尺度②:生産性(エンゲージメント)
「組織への愛着」「役割の遂行」「仕事に対する向上心」の3因子で構成独自指標:Well-Beingスコア
身体愁訴と心理的要素を統合し、健康経営のKGIとしても活用可能
なぜストレスチェックで、エンゲージメントを測ることをすすめるのか?
調査の重複を避け、従業員の負担を軽減して回答率を向上
ストレスチェックとエンゲージメントサーベイを別々に実施すると、回答の手間が増え、回答率や精度の低下につながることがあります。統合型サーベイであれば、1回の調査で複数の視点からデータを取得でき、従業員の負担を最小限に抑えられます。
ストレス要因とエンゲージメント要因を同時に分析
心理的ストレスの背景には、業務負荷だけでなく、職場の人間関係や成長機会の不足といった要因が潜んでいることがあります。統合的に分析することで、表面的な数値だけでなく、根本的な課題の特定が可能になります。
組織改善のPDCAを一元的に回せる
ストレスチェックとエンゲージメントの結果を別々に扱うと、改善施策も分断されがちです。統合型サーベイであれば、1つのデータ基盤から課題を抽出し、施策の立案・実行・再評価までを一貫して行うことができます。
健康経営優良法人認定に必要なデータを効率的に収集可能
健康経営の取り組みを対外的に示すためには、定量的なデータの蓄積と活用が不可欠です。HoPEサーベイのような統合型ツールを活用すれば、ストレスチェック制度への対応と同時に、エンゲージメントやWell-Beingといった人的資本の質も可視化でき、認定取得にもつながります。
エンゲージメントスコアを組織の未来を映す“指標”としてだけでなく“資産”として活用するには
エンゲージメントスコアは、従業員の意欲や貢献意識といった目に見えにくい価値を、定量的に捉えるための強力なツールです。
厚生労働省が示す「ワーク・エンゲージメント」の3要素を軸に、組織への愛着・役割の遂行意欲・仕事への向上心といった因子を測定することで、組織の“今”と“これから”を可視化できます。
経済産業省の『健康経営ガイドブック2025』でも、エンゲージメントは健康経営のKPIとして位置づけられており、人的資本経営の実践においても欠かせない指標です。さらに、身体的・心理的な健康状態と統合したWell-Beingスコアのように、設計次第ではKGI(最終成果指標)としての活用も可能です。
ストレスチェックを単なる義務で終わらせず、エンゲージメントやインクルージョンといった人的資本の質を一体的に捉える仕組みを整えることが、これからの健康経営の鍵となります。










