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企業の未来を変える「健康経営」の新潮流 ―第4回検討会から読み解く今後の展望-

企業の持続的成長において「健康経営」は、もはや選択肢ではなく、必須の経営戦略となりつつあります。2025年12月16日に開催された「第4回健康経営推進検討会」では、健康経営の今後の方向性や新制度の検討、現場の課題などが多角的に議論されました。

本記事では、経済産業省が公開した検討会資料の中から、「資料2」および「資料4」を中心に、企業の人事担当者やストレスチェック実務者が押さえておくべき最新動向と、今後の実務に活かせるヒントをわかりやすく解説します。

目次[非表示]

  1. 1.高市政権が示す「健康経営」への国家的コミットメント
  2. 2.調査票の結果から見える企業の現状と課題
    1. 2.1.実施率の高い基本施策:健康経営の土台づくりとして最初に取り組むべき項目
    2. 2.2.実施率が低い重点分野:戦略的な深化と社外発信が求められる領域
    3. 2.3.女性の健康支援への関心の高まり
    4. 2.4.情報開示と社外発信の課題
  3. 3.実務担当者へのアドバイス:段階的な導入と社内浸透
  4. 4.今後の健康経営を形づくる7つの注目ポイント
    1. 4.1.1.健康経営銘柄「殿堂入り制度」の検討
    2. 4.2.2.テーマ別評価の導入
    3. 4.3.3.戦略的な目標設定とKGIの明確化
    4. 4.4.4.健康投資の可視化と情報開示
    5. 4.5.5.女性特有の健康課題への対応
    6. 4.6.6.若年層へのアプローチとライフデザイン経営
    7. 4.7.7.画一的なゴールから、企業独自の価値創出へ
  5. 5.実務担当者が今すぐできるアクション
  6. 6.まとめ:健康経営は「企業の未来をつくる経営戦略」

高市政権が示す「健康経営」への国家的コミットメント

資料2の7枚目スライドでは、現政権(高市政権)が健康経営を国家戦略の一環として明確に位置づけていることが示されました。

特に注目すべきは、「攻めの予防医療」という視点を重視し、従来の受け身の健康管理から一歩進んだ、戦略的かつ先進的な健康投資を推進していく姿勢が打ち出されている点です。

また、「性差に由来した健康課題への対応を加速」する方針も明記されており、女性特有の健康課題やライフステージに応じた支援の必要性が、政策レベルで強く意識されていることがわかります。

これは、企業にとっても女性活躍推進やダイバーシティ経営を進めるうえで、非常に重要な後押しとなるでしょう。

こうした政府の明確な支援方針は、企業の自主的な取り組みを後押しするだけでなく、社会的評価や投資家からの注目を集める要因にもなります。

今後、制度の活用や情報開示を通じて、健康経営を経営戦略の柱として位置づける企業がますます増えていくことが期待されます。

調査票の結果から見える企業の現状と課題

第4回検討会で共有された資料4では、企業や関係団体からの健康経営度調査票の結果をもとに、健康経営の取り組みに関する現状と課題が明らかになりました。

集計結果からは、すでに多くの企業が取り組んでいる施策と、導入が進んでいない分野の明確な差が浮き彫りになっており、今後の優先的な取り組みを検討するうえでの重要な指標となります。

実施率の高い基本施策:健康経営の土台づくりとして最初に取り組むべき項目

結果からは、すでに多くの企業で実施され、健康経営の基盤として定着しつつある施策が明らかになりました。

これらは導入のハードルが比較的低く、社内での理解や浸透も進んでいることから、今後取り組みを始める企業にとっても参考となる基本施策です。

【主な実施状況】

  • 健康経営推進方針を経営トップ自らが発信(8割超)

  • 産業保健の専門家の意見を取り入れて健康経営方針を策定(8割以上)

  • 文書や集会、研修等を通じて従業員に健康経営の推進方針を浸透(6割以上)

  • 女性の健康に関する教育について対象を限定せず実施(約6割)

  • 健康経営の継続的な実施による健康風土の醸成状況を把握(約9割)

これらの取り組みは、健康経営を一過性の施策ではなく、組織文化として根づかせるための重要な要素です。

特に、トップの関与や専門家の知見を活かした体制づくりは、従業員の信頼と共感を得るうえでも効果的です。

実施率が低い重点分野:戦略的な深化と社外発信が求められる領域

一方で、まだ十分に取り組まれていない分野も明らかになりました。

これらは実施率が3〜4割程度にとどまっており、今後の健康経営の深化や企業価値の向上に向けた「次のステップ」として注目されています。

【主な実施状況】

  • 経営計画への健康経営KPIの導入やマテリアリティに健康経営推進を組み込む(約4割)

  • 社外取締役や経営の専門家に意見を求める(約3割)

  • 健康経営推進方針等を取締役会で議論・意思決定(約3割)

  • 昨年度までの評価結果を社外に発信(約3割)

  • 投資家との対話で健康経営を説明(約4割)

これらの分野は、経営戦略や組織運営との連動、社内外への説明責任を果たすうえで重要な領域です。

導入には一定の準備や体制整備が求められますが、企業の信頼性や持続的な健康経営の実現に向けた基盤づくりとして、今後の取り組みが期待されます。

特に、健康経営ガイドブックなどを参考にしながら、戦略マップや推進体制の見直し・再構築を行うことは、企業規模や業種を問わず実行可能なアプローチです。

KPIやKGIの設定・検証を通じて施策の成果を可視化し、経営層と共有することで、健康経営を「経営の一部」として定着させることができます。

現場の声から見える課題

  • 健康経営を担う部署や担当者の役割が曖昧で、他業務との兼任による負担が大きい。

  • KPIやKGIの設定・評価が難しく、戦略マップや推進計画との連動に課題がある。

  • 健康施策への関心が低く、特に若年層や非正規社員の参加を促すのが難しい。

  • 専門家や地域資源との連携方法が分からず、他社の事例やノウハウも活用しにくい。

女性の健康支援への関心の高まり

  • 「月経・更年期に関する理解促進」「妊娠・出産に関する支援制度の整備」など、女性特有の健康課題への対応を求める声が多数。

  • プレコンセプションケア(妊娠前の健康管理)に関する新たな資格制度の整備が検討されており、企業内での活用が期待される。

情報開示と社外発信の課題

  • 健康経営に関する取り組みを社外に発信していない企業が多く、情報開示の方法が分からないという課題も。

  • 健康経営の成果を定量的に示し、社内外に発信することが企業価値向上のカギとなる。

実務担当者へのアドバイス:段階的な導入と社内浸透

健康経営の取り組みは、一度にすべてを実施する必要はありません。まずは実施率の高い基本施策を確実に行い、社内の理解と土台を固めることが先決です。

そのうえで、以下のようなステップで段階的に取り組みを広げていくと、無理なく効果的な健康経営が実現できます。

【健康経営実現のステップ】

  1. 現状把握と優先課題の整理(調査票の活用)

  2. 基本施策の徹底と社内浸透

  3. 女性支援や両立支援など、重点テーマの導入検討

  4. 成果の定量化と情報開示の準備

  5. 地域・取引先との連携による外部への波及

今後の健康経営を形づくる7つの注目ポイント

第4回検討会で示された今後の方向性を踏まえ、企業が戦略的に取り組むべき7つの重点テーマを以下に整理しました。それぞれの視点が、これからの健康経営の質と深さを左右する重要な要素となります。

1.健康経営銘柄「殿堂入り制度」の検討

健康経営の模範企業を「殿堂入り」として表彰し、他企業へのロールモデルやアンバサダーとして活躍してもらう制度が検討されています。

【現在検討さえている要件案】

  • 健康経営銘柄に通算10回以上選定されていること

  • 当該年にも選定されていること

  • 地域や他社に対して健康経営の普及活動を行っていること

この制度は、企業の社会的責任(CSR)やESG経営の一環としても注目され、企業のブランド価値向上に寄与します。

2.テーマ別評価の導入

企業の取り組みは「100社100様」。その多様性を尊重し、テーマ別の評価や表彰制度の導入が検討されています。

【テーマ例】

  • メンタルヘルス対策

  • 女性の健康支援

  • プレコンセプションケア

  • 地域連携型の健康施策

柔軟な評価軸の導入により、企業は自社の強みを活かした取り組みを推進しやすくなります。

3.戦略的な目標設定とKGIの明確化

健康経営の成果を「見える化」するためには、戦略的な目標設定が不可欠です。

【目標例】

  • エンゲージメント向上

  • 離職率の低減

  • 生産性の向上

これらをKGI(重要目標達成指標)として設定し、施策との関連性を定量的に示すことで、経営層の理解と支援を得やすくなります。

エンゲージメントと健康経営に関する記事はこちら→【2025年最新版】健康経営における「エンゲージメント」とは? 『ストレスチェック・メンタルヘルスとの関係』と『KPI・KGIへの活用』のポイント | 保健同人フロンティア

4.健康投資の可視化と情報開示

機関投資家の63%しか健康経営優良法人認定を意識していないというデータからも、情報開示の重要性が浮き彫りになっています。

今後は、健康投資と財務・非財務指標(ROE、PERなど)の相関を示す実証研究やデータの蓄積が求められます。

5.女性特有の健康課題への対応

月経、妊娠、更年期など、女性のライフステージに応じた健康課題への配慮は、職場環境の改善や離職防止、エンゲージメント向上に直結します。

近年では、これらの課題に対する理解促進や、柔軟な勤務制度の整備、相談体制の強化などを通じて、女性が安心して働き続けられる環境づくりを進める企業が増えています。

こうした取り組みは、ダイバーシティ推進や人材確保の観点からも、今後ますます重要性を増していくでしょう。

【こちらもオススメ】

  • 女性の健康課題の影響が知りたい
  • 健康経営における女性の健康課題の施策に悩んでいる
  • 女性の健康課題の施策をこれから検討する

と悩まれている方には以下の資料がおすすめです。無料でダウンロード可能ですのでぜひご覧ください。

お役立ち資料:女性特有の健康課題に対する健康経営戦略

6.若年層へのアプローチとライフデザイン経営

若年層の人材確保が課題となる中、「ライフデザイン経営」が注目されています。これは、社員がキャリアとライフを両立し、自分らしい働き方を実現できるよう支援する経営スタイルです。

プレコンセプションケアの導入や正しい知識の提供を通じて、企業と社員のエンゲージメントを高めることが期待されます。

7.画一的なゴールから、企業独自の価値創出へ

これまでの健康経営は、制度や評価基準に沿った「画一的なゴール」を目指す傾向が強く、企業側もその枠組みに合わせて取り組みを進めてきました。

しかし、第4回検討会では、今後は企業ごとの文化や課題に応じた「独自のビジョン」や「創意工夫」を重視する方向性が明確に示されました。

企業が自らの強みや地域性、業種特性を活かして健康経営を設計・実行することで、従業員の共感や主体的な参加を促し、エンゲージメントの向上につながります。

【企業独自の取り組み例】

  • 地域密着型の健康支援を通じて、地域社会との共生を図る

  • 働き方改革と連動した柔軟な勤務制度を整備する

  • 女性や若年層のライフステージに寄り添った支援策を導入する

このように、今後の健康経営は「制度に適合する」ことを目的とするのではなく、「自社らしさを活かして価値を創出する」段階へと進化していくことが求められています。

企業の個性や理念を反映した健康経営こそが、持続可能な成長と社会的信頼の獲得につながるのです。

実務担当者が今すぐできるアクション

健康経営を推進するうえで、「まず何から始めればよいのか」と悩む担当者も多いはずです。ここでは、すぐに実行可能で、かつ効果的なステップを7つに整理しました。

  1. 自社の健康経営の取り組みをテーマ別に整理し、強みを明確化する

  2. 戦略的な目標(KGI)を設定し、施策との関連性を可視化する

  3. 健康経営に関する情報開示を強化し、社内外への発信を行う

  4. 若年層や多様な世代に向けた健康支援施策を導入・見直す

  5. 地域や他社、取引先との連携による健康経営の波及を図る

  6. 社内の声を反映した柔軟な制度設計や運用体制を見直す

  7. 自社独自の健康経営ビジョンを策定し、従業員と共有する

どれも一度に完璧を目指す必要はありません。

まずは、自社で実現可能なことから一歩ずつ着実に進めていきましょう。

まとめ:健康経営は「企業の未来をつくる経営戦略」

第4回健康経営推進検討会の議論から明らかになったのは、健康経営が単なる福利厚生の枠を超え、企業の成長を支える中核的な戦略であるということです。

高市政権による国家的な後押し、女性特有の健康課題への対応、子ども家庭庁と連動するプレコンセプションケアの推進、そして企業ごとの独自性を尊重する新たな評価軸の導入など、健康経営は今まさに大きな転換点を迎えています。

人材確保、従業員エンゲージメントの向上、生産性の改善、投資家からの評価といった多方面において、健康経営の価値はますます高まっています。企業がこの流れを的確に捉え、戦略的かつ柔軟に取り組むことで、持続可能な成長と社会的信頼の獲得が可能になります。

これからの時代、健康経営は「やるべきこと」ではなく、「やらなければならないこと」。そしてそれは、企業の未来をつくる力そのものです。

MBK Wellness株式会社では、健康経営の推進に役立つ多様なソリューションをご提供しています。

なかでも、専門職コンサルタントが年間を通じて伴走する『健康経営支援サービス』では、課題の抽出から施策立案、調査票の記入支援、さらには具体的なソリューションのご提案まで、一貫したサポートを行っています。

長年にわたる相談支援の実績をもとに、管理職・従業員向けの教育プログラム、ストレスチェックを活用した定量的な効果測定、職場環境の改善支援など、企業の健康経営を多角的に支えるサービスを取り揃えています。

導入事例はこちら→お客様の声|健康経営は当社にお任せ!

監修:佐々木玲子
監修:佐々木玲子
【所属:MBK Wellness株式会社 保健同人フロンティア事業本部 健康経営事業部 企画・マーケティング室 (管理栄養士/公認心理師)】 地域や医療機関、研究所およびフリーランスの活動を経て、当社にて保健指導、EAP(従業員支援プログラム)、研修、各種コンサルティングの企画・実施に従事。現在は、これまでの経験を活かし、企業人事の視点に立った、従業員の健康支援や人的資本投資に資するサービスの企画・開発を担当。 メンタル・フィジカルの両面から、従業員一人ひとりの「Well-being」の実現を目指し、企業の健康経営に基づく持続的成長を支援している。

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