企業必見!企業に求められる効果的なメンタルヘルス対策とは
厚生労働省は「労働者の心の健康の保持増進のための指針」(メンタルヘルス指針、平成18年3月 策定、平成 27 年 11 月 30 日改正)を定め、職場におけるメンタルヘルス対策を推進しており、企業に対してメンタルヘルス対策の実施を義務付けています。
従業員のメンタルヘルスが良好であることは、本人の健康保持はもちろんのこと、企業の成長には必要不可欠となります。しかし、近年はメンタルヘルスの課題を抱える企業が増えており、どのような対策をとるか苦戦している方も多いと言われています。
そこで、本記事では、実践するべきメンタルヘルス対策と効果的な施策のポイントについて解説をしていきます。
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メンタルヘルスとは?
メンタルヘルスとはひとりひとりの心の健康状態を指します。仕事や人間関係での悩みを抱え続けてしまう等で、ストレスが蓄積することで、仕事に対する意欲やパフォーマンスが下がったり、心だけではなく身体の不調、欠勤数の増加、休職、退職をしてしまったりと様々な問題に発展します。一方で、メンタルヘルスが良好な状態だと、心身の健康を保ち、仕事にも意欲的に取り組むことができ、生産性の向上が期待できます。
従業員のメンタルヘルスの状態は企業の成長に直結するといわれており、メンタルヘルス不調の予防や早期に発見・対処することが、人事担当者が求められる大切な役割となります。
企業における現状と課題
厚労省が毎年行っている「労働安全衛生調査」によると、令和2年からメンタルヘルスによる休職者やそれにともなう退職者の割合が増えているといわれています。特に、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、急激な労働環境の変化、リモートワークによるコミュニケーション機会の喪失、感染症への不安、生活の大きな変化等により、メンタルヘルス不調が増えているといわれています。
一方で、企業における健康経営の実践も広まっており、メンタルヘルス不調の防止だけではなく、仕事の生産性の向上や企業の成長という視点からも、様々な健康増進施策をおこなっています。
このような社会情勢からも、企業はこれまで以上にメンタルヘルス対策を講じる必要性がでてきています。
メンタルヘルス対策の目的
企業におけるメンタルヘルス対策の主な目的は以下の通りです。
- 従業員の健康保持
- 生産性の向上
- リスクマネジメント
- 企業の社会的責任(CSR)を果たすこと
メンタルヘルス不調になることで、仕事の集中力が低下してミスを起こしやすい状態になってしまいます。例えば、業務上で重大な事故が起きることで、自社の顧客等に迷惑をかけてしまったという実際の事故も起きていますので、このような事象を防ぐためにもメンタルヘルス対策をしっかり行っていくことが重要です。
メンタルヘルス対策の3つのステップ
メンタルヘルス対策には、3つのステップがあります。対象と目的を整理して施策を検討・実施することで、より効果的な対策を行うことができるようになります。
一次予防
全従業員に対して、メンタルヘルス不調を未然に防ぐことを目的とした対策を講じることです。対策の方法としては、メンタルヘルスに関する教育の実施や情報提供、ストレスチェックになります。メンタルヘルス不調は誰でも起こりうるものであるため、メンタルヘルスに関する正しい理解やストレスケアの方法等といったセルフケアのスキルの獲得や、ストレスチェックによって、本人へのストレス状態の気づきを与えるとともに、職場におけるストレス状態を把握することも一次予防の一つです。
二次予防
メンタルヘルス不調の兆しが表れている従業員に対して、不調の早期発見と適切な対応を行うことを目的とした対策を講じることです。普段よりも体調が悪そう、以前よりも欠勤や遅刻等が目立っている、仕事のミスが多くなっている等、不調兆しが出ている従業員を早期に発見し、管理監督者、人事、産業保健スタッフ等が連携し、悪化する前に支援をすることが求められます。
三次予防
既に休職している従業員の方に対して、スムーズに職場復帰することを目的とした対策を講じることです。復職の制度策定や復職プログラムの提供、復職後の本人へのフォロー、再発防止の取組の実施等を行うことが求められます。本人の状態や復職予定の職場、仕事内容等によって個別の判断や支援が必要となってくる場合が多いので、専門職の知見を活用することが求められます。
厚生労働省からは、「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き~メンタルヘルス対策における職場復帰支援~ 」という手引きを公表しているので参考にしてみてください。
自社の現在の施策や制度を振り返り、一次予防~三次予防まで対応できているか、目的が混同している部分がないか、不足している点がないか、ご確認をいただくことをおすすめします。
メンタルヘルス対策を効果的に進めるためのポイント
メンタルヘルス対策は人事だけで実行するだけではなかなかうまくいきません。そこで、効果的に進めるためのポイントをご紹介いたします。
メンタルヘルス対策に関する方針や重要性を会社として定期的に発信する
経営者自身が、自社の理念と合わせてメンタルヘルス対策の方針や重要性を発信することで、従業員が納得感や安心感をもってメンタルヘルス施策に参加できる組織風土を作ることが可能です。また、1回だけではなく定期的な発信を行うことで、浸透しやすくなります。実際に、メンタルヘルス対策を積極的に行っている企業の多くが行っていますので、まだ実施していない、1回しか話していないということであれば、定期的に発信する場をつくってみることをおすすめします。
専門職や外部EAP機関からの支援を活用する
産業保健スタッフや産業医、外部のEAP機関など、専門職の知見を取り入れたり、実際の支援を手助けしてもらうような体制を用意するとよいでしょう。メンタルヘルス対策の中では、企業全体の施策の策定と実行がある一方で、個別の対応も必要になってくる場面が多いです。全社的な施策は人事中心、個別対応は専門職中心に進める、など役割分担をうまく行うことで、業務負担の軽減をしながら質の高い対策を行うことが可能となります。
管理監督者のメンタルヘルスへの意識を向上させる
管理監督者のメンタルヘルス意識を高くもつことで、不調気味の従業員の早期発見・対応が実施できることだけではなく、教育機会への参加の後押しや、良好な職場環境づくりにつながり、不調予防につながります。なかなかメンタルヘルス対策が浸透しない企業は、まず管理監督者をターゲットにメンタルヘルスの重要性を繰り返し発信して、納得してもらうことが大切です。
まとめ
従業員のメンタルヘルスの良好な状態を維持・増進することは、企業の成長に必ず必要になります。そのためには、対象や目的を整理してそれぞれに効果的な施策を行うことが重要です。また、より効果的な対策を実行するためには、メンタルヘルスの重要性について会社からの定期的な発信、専門家の活用、管理監督者のメンタルヘルス意識向上、この3つのポイントを意識することが大切です。